網目状の切り込みがついた一枚の紙、使う人の手によって自由にその形と用途を変える・・・「空気の器」。
みなさん、どこかのメディアや展示などで一度は目にした事があるのではないでしょうか?
2010年の発売から大きな話題を呼び、ルーブル美術館やMoMAのミュージアムショップでも取り扱われているこの商品、作っているのは立川で50年の歴史を持つ印刷会社「福永紙工」さんなのです。
今回は、立川から日本全国・世界へとアーティスティックな紙製品を発信する、一見昭和レトロな風貌の町工場、「福永紙工」さんへ取材に行ってきました!
立川市錦町にある福永紙工。
ぱっと見は、ここであのハイセンスな商品たちが作られているとは思えない(ごめんなさい!)、昭和のドラマに出てきそうな、昔ながらの町工場といった雰囲気。
インクのにおいが漂う薄暗い工場内を奥に進み、オフィス棟3階の一室に入ると雰囲気が一変。
ホワイトを基調とした明るくてお洒落なオフィス、「かみの工作所」で、社長の山田明良さんが迎えてくれました。
福永紙工は、昭和38年創立の印刷会社。
元々は主にパッケージを製作する会社なのだそうです。
「空気の器」などのデザイナーとのコラボ商品を企画しているのは、福永紙工の中の「かみの工作所」というプロジェクトチーム。
2005年、国立の「つくし文具店」の二代目店主で、デザインディレクターの萩原修さんと山田社長との出会いからプロジェクトは始まりました。
20年前に立川に来る前は、元々は都内でファッション関係のお仕事をなさっていたということもあり、デザイン好きの山田社長。
下請けとして、受け身中心だった印刷会社から、デザインに特化した「自分たちが発する印刷会社」へ一歩踏み出したのでした。
かみの工作所、第一作目は「かみめがね」。
かみの工作所アートディレクターでもある三星安澄さんの作品です。
第一回展示会「かみの道具展」は国立の「つくし文具店」で。
駅からちょっと遠い場所だけれど、北海道から来たコアなファンもいたのだとか。
第二回展示会「かみの道具展2」は2008年、お茶の水に当時あった美篶堂のギャラリー。
この時に建築家の寺田尚樹さんの「1/100建築模型用添景セット」も発表。
テラダモケイ No.36 ぶどう狩り編 photo:Kenji MASUNAGA
このあたりから、かみの工作所は大きく動き出し、2009年、2010年には、国際見本市「インテリアライフスタイル」に出展。
海外からの問い合せも増え、海外での販売(MoMAなど)もはじまります。
2010年の六本木AXISビブリオファイルでの「かみの道具3トクショクシコウ展」。
ここで発表された「空気の器」が反響を呼び、大きくブレイクしたのです。
空気の器 photo:Fuminari Yoshitsugu
福永紙工とデザイナーが直接やり取りし、製品化・販売までの全工程を自社で行う、というのが「かみの工作所」のポイント。
間にデザイン知識のない人が入ると、どうしてもデザイナーの意図が伝わらなくて手間がかかったり、中和されて結局無難なモノになってしまったりするけれど、デザイナーと直接仕事をする事により、材質、色、カタチ・・・デザイナーの意図を忠実に再現できるのだそう。
そうか、だから、「かみの工作所」からはこんなにエッジィな商品が生み出せるのですね。
特に新しい機械を導入するのではなく、福永紙工に元々ある印刷加工機械と職人さんの技術の中から何か発想できないか・・・既存の設備・技術の可能性をどれだけ掘り起こせるか・・・それが、山田社長からデザイナーたちへの希望。
「今ある環境の中で、デザイナーに自由な発想力を発揮してもらいたい。そこから、どう売るか考える。なので、特にマーケティングはしないんです。」と語る山田社長。
でも、あまりにもデザインがとんがりすぎてお客様には理解しづらい商品も、いくつもあるんだとか(笑)
立川の地で50年。
メジャーになった今、都心に移転したりする事は考えていないのですか?との問いに「そんなにお金が無いです~」と笑う山田社長。
今は六本木や渋谷ヒカリエなど、都心で展示会を開く事が多くなった福永紙工のかみの工作所プロジェクト。
「立川にも芸術のスポットになってくれるような場所があれば、わざわざヒカリエに行かなくても立川で展示会が出来るんだけどね~。大きな美術館とか出来たらいいよね。」
新宿とか吉祥寺とか、そういう場所をまねる必要はない。
でも、もう少し立川市独自の個性があったら・・・と、山田社長は立川について語ります。
最後に工場見学をさせていただきました。
うわぁ~、中はこんなに広かったのですね!
インクと紙のにおいが、何だかいい感じです。
工場内には、若い方もいらっしゃるのですが、熟練職人の雰囲気漂う方が多いような気がします。
やはり、技術力が大切なのですね。
新商品の試作品の説明をして下さる山田社長。
楽しそうにお話して下さる様子が、少年のようでちょっとかわいい!と思ってしまったのでした。
精密さが求められる、型抜きをする様子も見学させていただきました。
今までの作品の型抜きに使用した型板がたくさん!
10年ほど保管しておくのだそうです。
昔ながらの町工場と、デザインの先端を行くプロジェクトオフィス。
二つの顔が共存する「福永紙工」。
ジェントルな雰囲気漂う山田社長との、とても貴重なひとときでした。
今後、立川の企業同士として、立川を元気にしたり素敵に変化させていくようなプロジェクトがあれば、ぜひ一緒に何かできたら、と思いました。
貴重なお時間をいただき、どうもありがとうございました!
「かみの工作所」展示会のご案内
「PAPER GAME CENTER 紙のゲームからはじまるコミュニケーション展」
6つの新しい「紙のゲーム」の発表を記念して、渋谷のヒカリエで、
このゲームを楽しむための「PAPER GAME CENTER」を期間限定でオープン
会期:2013.09.04(水)- 09.16(月・祝) 11:00-20:00
会場:渋谷ヒカリエ 8F 「8/ CUBE1,2,3」
オープニングパーティー
09. 04(水)18:30~20:30
会場:渋谷ヒカリエ8F「8/ COURT」渋谷区渋谷2-21-1
詳細は以下
「PAPER GAME CENTER 紙のゲームからはじまるコミュニケーション展」
PAPER GAME CENTER参加デザイナー
◎エマニュエル・ムホー(建築家・デザイナー)
◎スイッチデザイン(プロダクトデザイナー)
◎大日本タイポ組合(グラフィックデザイナー)
◎トラフ建築設計事務所(建築家)
◎三星安澄(グラフィックデザイナー)
◎山中俊治(プロダクトデザイナー)
主催|かみの工作所/福永紙工
企画|萩原 修
マネージメント|山田明良
会場構成|エマニュエル・ムホー
グラフィックデザイン|三星安澄
写真|阿部良寛
お問合せ先
かみの工作所/福永紙工株式会社
〒190-0022 東京都立川市錦町6-10-4
TEL 042-526-9215 FAX 042-527-4632
立川付近での福永紙工製品取扱店のご案内
オリオンパピルス(空気の器 minä perhonen取り扱いあり)
ヴィレッジ・ヴァンガード ルミネ立川店
ロフト立川店(テラダモケイのみ)
「かみの工作所」HP http://www.kaminokousakujo.jp
「かみの工作所」FB https://www.facebook.com/kaminokousakujo
「TERADA MOKEI」HP http://www.teradamokei.jp/
「鈴木康広×福永紙工」HP http://www.fukunaga-print.co.jp/suzukiyasuhiro/
「鈴木康広×福永紙工」FB https://www.facebook.com/suzukiyasuhirofukunagaprint?fref=ts
「かみぐ」福永紙工のWEB SHOP http://www.kamigu.jp/ *近日、リニューアルします!
福永紙工株式会社
〒190-0022 東京都立川市錦町6-10-4
TEL 042-523-1515 FAX 042-527-4632
かみの工作所
〒190-0022 東京都立川市錦町6-10-4
TEL 042-526-9215 FAX 042-527-4632